ガンダーラ仏とは、紀元1～7世紀頃に現在のパキスタン北西部にあるガンダーラ地方で制作された仏像のことです。
ガンダーラ仏は、仏教とギリシャ彫刻の文化が融合した独特の美術様式を持っています。ガンダーラ仏の特徴は、以下のように挙げられます。
- 頭髪は波状の長髪で、頭上で束ねて肉髻（にくい）という形にしています。これはギリシア神話のアポロンやヘラクレスなどの神々や英雄の髪型に由来します。
- 顔立ちは西洋人風で、鼻筋が通って眼窩がくぼんでいます。これはギリシア彫刻の写実的な表現技法に影響されたものです。
- 衣服は厚手の布で両肩を覆っています。衣服には深く刻まれた襞（ひだ）があり、動きや重みを表現しています。これはギリシア彫刻のドレープ（ひだづくり）に倣ったものです。
- 彫刻はほとんどがレリーフ（浮彫り）で、ストゥーパ（仏塔）や寺院の壁面に飾られています。レリーフは背景と一体化しており、遠近法や陰影などの空間表現を用いています。これはギリシア彫刻のレリーフに学んだものです。
ガンダーラ仏は、インド本土や中央アジア、中国、朝鮮半島、日本などにも伝播し、仏像彫刻の発展に大きな影響を与えました。ガンダーラ仏は、東西文化交流の産物としてだけでなく、仏教美術の傑作としても高く評価されています。ガンダーラ仏を見ることで、仏像のもつハイセンスな臨場感を楽しむことができます。
